成形現場のお役立ちコラム
【射出成形】夏場の冷却水トラブル完全対策|6月から始める予防点検チェックリスト
射出成形の現場において、金型の冷却水管理は成形品質と生産効率を左右する極めて重要な要素です。とくに夏場は、外気温や工場内の室温・循環水温の上昇により冷却システムにかかる負荷が年間で最も高くなります。そのため、普段は見逃されていた水質の悪化や設備の能力不足が一気に表面化しやすくなります。
実は、冷却水に起因する成形不良やチラーの設備停止は、外気温が急上昇する夏場(7 〜 8 月)に発生しやすくなる傾向があります。本格的な猛暑を迎える前の6月から始める、夏限定の予防保全ガイドをお届けします。
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1. なぜ夏場は冷却水トラブルが増えるのか?
夏場にトラブルが激増する根本原因は、「外気温と湿度の急上昇」に冷却システムが追いつかなくなるためです。具体的には、夏特有の以下の5つの異常が連鎖的に発生します。
- 冷却塔(クーリングタワー)の熱交換効率の低下: 冷却塔は水の蒸発熱を利用して冷やしますが、夏の高気温・高湿度下では水の蒸発が進みにくくなり、供給水温が設定通りに下がらなくなります。
- チラーの過負荷運転と高圧遮断エラー: 外気温や周囲の室温が38℃を超えるような環境では、チラー本体からの放熱が阻害され、コンプレッサーに過大な負荷がかかります。限界を超えると「高圧遮断(ハイプレッシャー)」でチラーが突然停止します。
- 水温上昇に伴う「藻・バクテリア」の繁殖: 循環水の温度が 20 〜 30 ℃程度になると、水内の藻や雑菌が繁殖しやすくなります。これにより配管内にスライム(粘性のある汚れ)が形成され、急激な目詰まりを起こします。
- 工場内湿度の上昇による「配管の結露」: 冷たい水が通る配管や金型の外側に、工場内の高温多湿な空気が触れることで大量の結露が発生し、床面の汚染や電気系統への水漏れ(二次災害)を引き起こします。
- 水温上昇による腐食・スケール付着の促進: 水温が上昇すると金属の腐食反応やシリカ・カルシウム成分の析出が進みやすくなり、配管や金型内へのスケール付着が増加する場合があります。
2. 夏本番前に事前点検チェックリスト
本格的な猛暑が始まる前に、ぜひ以下の項目を点検してみてください。
【設備・チラー回り】
- □ チラーのコンデンサー(凝縮器)清掃: アルミフィンに埃やゴミが詰まっていないか?(目詰まりは高圧エラーの元)
- □ 冷却塔のファン・充填材の点検: 充填材にスケールや藻がびっしり付着していないか?
- □ 循環水の全量交換または水質改善: 設備管理基準に従い、必要に応じて水の交換やタンク清掃、水質改善を実施したか?
【配管・金型回り】
- □ 配管の防湿保温材の点検: 剥がれや隙間がないか?(結露防止)
- □ ストレーナー(フィルター)の分解清掃: 内部に溜まったゴミや錆を取り除いたか?
- □ 通水確認ツールの点検: フローチェッカーの回転子や水流監視装置の視認性に問題はないか?
【水質管理】
- □ 簡易水質検査の実施: 水の色や濁りの確認、または検査キットでpH・導電率が基準値内か?
3. 夏場特有の3大トラブルと対策
① 供給水温上昇(冷却塔の能力低下)
現象: チラーや冷却塔から金型へ送られる水の温度が下がりきらず、成形品の「型冷え」が悪化します。サイクルタイムが延びたり、取り出し時に製品が変形・ピン押し白化したりします。
対策: 冷却塔の周囲に遮蔽物がないか確認し、十分な通風を確保します。また、チラー室の排気ファンが正常に動いているかチェックしてください。設備能力の限界である場合は、応急措置として補給水の活用を検討する方法もありますが、水質や薬剤濃度への影響に注意が必要です。根本対策としては、ポータブルチラーの増設や冷却設備能力の見直しを検討します。
② 藻・バクテリア繁殖(緑水化・悪臭)
現象: 循環水が緑色に濁る(緑水化)、あるいはヘドロのような悪臭がする状態です。配管内壁やストレーナーにスライムが付着し、流量が大幅に低下します。
対策: スライムコントロール剤(微生物や粘性汚れの発生を抑制する薬剤)や防藻剤を循環水に適量投入します。また、直射日光が当たる場所に露出しているホースや透明配管があると藻が急繁殖するため、遮光カバーを取り付けるか、黒色の不透明なホースへ変更します。
③ 配管外側の結露漏水(二次災害)
現象: 水温と工場内室温の温度差(露点)により、配管やホースの外側に大量の水滴が発生します。床に滴り落ちて足元が滑る危険を生むだけでなく、金型内部や成形機の電気配線、周辺機器に浸入してショートや故障を引き起こします。
対策: 冷却水用の配管や継手部分に、防露用の保温チューブや断熱テープを隙間なく巻き付けます。また、成形一時停止時には金型への通水を自動で止める回路(結露防止弁)の導入も効果的です。
4. 対応マニュアル:サイクルタイム急増時の診断フロー
夏場に「急に製品の離型が悪くなった」「サイクルタイムが数秒延びた」という異常を検知した際、現場で原因を検証するためのクイックフローです。
まずは、チラーや温調機の「供給水温(IN)」と「戻り水温(OUT)」の数値を手早く確認します。
- 供給水温(IN)自体が高い場合: 冷却塔やチラー自体の能力不足、または高圧遮断(ハイプレッシャー)などの設備エラーが発生している可能性があります。まずはチラー本体や冷却塔側に異常がないかを確認してください。
- 供給水温(IN)が正常な場合: 水の温度自体には問題がないため、原因は水路のどこかにあると判断し、次のステップへ進みます。
Next、金型への通水状態や、設置されている確認ツール(フローチェッカーや水流監視装置など)を目視でチェックします。
- 回転子が停止している、またはランプが消灯している場合: 配管が完全に詰まっているか、あるいはバルブの閉め忘れなどのヒューマンエラーが疑われます。
- ツールは動いているが、戻り水温(OUT)が高い場合: 水は流れているものの流量が不足し、冷却水が金型内に長く滞留している可能性があります。スケールやスライムの堆積による流路狭窄など、詰まりの初期症状が疑われます。
- 流量や戻り水温も正常な場合: 通水状態に問題がなければ、最終ステップへ進みます。
水温・流量ともに大きな異常が見られない場合は、金型周辺やホースの接続部をじっくりと目視確認します。
- 外側に大量の水滴(結露)がついている場合: 高温多湿な夏特有の「結露」による熱ロスの影響、あるいはホースの接続部や金型内のOリングといったシール部から「微量な漏水」が発生している可能性があります。結露や漏水は成形機の電気系統の故障にも繋がるため、速やかな対策が必要です。
5. 夏の冷却水トラブルに関するよくある質問
まとめ
夏場の冷却水トラブルは、事後対応になると分解洗浄や設備修理で多大なコストと生産ロスが発生します。
冷却水は単に「流れているか」だけでなく、夏場の過酷な環境下でも「必要な状態で正常に機能しているか」を管理することが重要です。6月の今のうちにチェックリストを活用して事前点検を行い、現場の体制や予算に合わせた対策商品を導入して、万全の体制で猛暑を乗り切りましょう。
6. 成形現場ツールの専門通販「プラスコム」夏対策商品
夏場のトラブルを未然に防ぎ、現場で手軽に管理するためのプラスコムおすすめアイテムです。現場の課題感や予算(ニーズ)に合わせて最適な道具をお選びください。
- 水質検査キット: 循環水のpHや硬度をその場で簡易測定できるキットです。藻の繁殖やスケール化の予兆を数値でいち早く察知し、手遅れになる前の水質改善をサポートします。
- サビレーヌ(防錆・防スケール剤): 循環水タンクに投入するだけで、配管内壁に微細な皮膜を形成し、夏場に加速する赤錆の発生やシリカ・カルシウムの固着(スケール化)を強力に抑制します。
- 水流監視装置: 「バルブは開いているのに、なぜか型冷えが悪い」という夏特有のトラブルを見抜くインジケーターです。フローチェッカーのように「通水の有無」を目視確認できる手軽さを持ちながら、高輝度 LED ランプの光の変化によって、流量変化の目安を視覚的に確認できるため、スライムやスケールによるじわじわとした流量低下の早期発見に大きく貢献します。